起業家に伝えたい大切なこと

法人謄本で代表者住所を分からなくする対策

起業家バンク事務局

2022.10.26

法人を設立したとき、代表者の氏名と自宅住所が公開されることをご存じでしょうか。これらの個人情報は、法人謄本(履歴事項全部証明書など)に記載され、正式な手続きを踏めば誰でも閲覧することができます。

もちろん代表者の氏名や自宅住所が公開される理由はありますが、ストーカー被害などの不安を抱える女性起業家のため、できる限りの対策をこの記事で紹介します。これから法人を設立しようと検討している女性起業家に役立つ内容となれば幸いです。

法人謄本に代表者の個人情報が表示される理由

法人を設立するときに、なぜ代表者の氏名や自宅住所の公開が必要になるのでしょうか。結論から言うと、その理由は取引相手の保護に重きを置いているからです。

たとえば、取引相手が信用に値する法人なのかを確認するため、代表者の個人情報を参考にすることが考えられます。代表者の氏名や住所から反社会的勢力などとの関わりが判明すれば、取引を一切行わないといった判断が可能となります。

また、法人に連絡がとれなくなった場合の「緊急連絡先」しても利用できます。法人が悪意を持ってオフィスを引き払って雲隠れしてしまうと、法人を相手に訴訟を起こしたい場合など、泣き寝入りをせざるを得ないケースが想定されます。しかし、代表者個人の自宅住居は容易に変更しにくいため、代表者の個人住所をたどって連絡をとることが可能となります。

法人謄本の個人情報表示に潜むリスク

自分の本名と自宅住所が誰でも見られる状況になるのは、特に女性起業家にとっては非常に不安だと思います。万が一、あなたの個人情報が、ストーカーなどの悪意ある第三者に知られた場合、次のようなリスクが想定されます。

  • 郵便物が一方的に送られてくる/または郵便物を盗まれる
  • なりすまし被害を受ける
  • つきまといやストーカー被害にあう
  • 氏名や住所に紐づいた他の個人情報を盗まれる
  • 住居の不動産登記簿を閲覧され、抵当権など住宅の権利関係を知られてしまう

このようなリスクから、特に女性起業家が法人設立をあきらめてしまうことが問題視されています。起業は女性の働きかたの1つとして定着しつつありますが、法人を設立したことにより私生活を脅かすリスクがあるのでは、起業そのものが一向に進みません。

2022年9月の法改正

時代の変遷とともに、法人謄本での個人情報の表示について異を唱える人たちが現れ、その妥当性や法改正の必要性に関して議論しています。それらの議論を経て、商業登記規則等の一部が改正され、「法人の代表者がDV(ドメスティックバイオレンス)やストーカーの被害者である場合、その旨を申請すれば、代表者の住所は登記謄本に表示しない」という措置が2022年9月より施行されました。

法人登記における個人情報保護の問題が前進したのは間違いありませんが、それでもなお、現行の法人登記制度における個人情報保護は十分ではなく、法人の代表者がプライバシーを守る方法は自分で確立しなければなりません。

代表者がプライバシーを守るためにできる4つの対策

公に代表者の住所を非表示にできる対象者は「被害を受けた人」であり、これから起こるであろう被害を未然に防ぐことはできません。将来のリスクに対応しようとするなら、法律に頼るだけでなく自分自身でも、できる限りの対策をとる必要があると思います。ここでは、プライバシーを守る4つの対策をご紹介します。

①自宅の住所は可能な限り省略する

マンションなどの集合住宅に住んでいる人に限定されますが、マンションや部屋番号を省略して登記できることがあります。例えば、住民票上の住所が、

「〇〇県〇〇市〇〇区〇〇1丁目1番1号 ABCマンション101」

だとすると、「1丁目1番1号」以降のマンション名と部屋番号を省略して登記し、

「〇〇県〇〇市〇〇区〇〇1丁目1番1号」

と表記することができることがあります。建物名や部屋番号を非表示にするだけでも、個人の住所を特定されるリスクを減らすことができますが、住民票や印鑑証明書に登録されている住所によっては省略できないケースもあります。

②会社名でビジネスを展開しない

法人謄本を取得するには、会社名と本店所在地が必要となります。つまり、会社名が分からなければ、第三者に登記謄本を見られてしまう可能性が減少します。会社名を知られないようにするには、会社名の代わりに、「ブランド名やサービス名」を使用するのがいいでしょう。ユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングが社名ではなく、ブランド名(ユニクロ)で事業を展開するイメージと似ています。

③本名ではなく通称名(ビジネスネーム)を使用する

登記謄本に本名が表示されてしまうことは避けられないため、その他の場では通称名(ビジネスネーム)を使う方法も考えられます。名刺やホームページなどでビジネスネームを使用するようにすれば、第三者に本名が明らかになることはありません。たとえ、悪意ある誰かが法人謄本を閲覧したとしても、謄本に表示されている本名が、ビジネスネームを使用しているあなたと同一人物かどうか判断が付かないため、プライバシーを守る対策の1つとなります。

なお、法人の代表者が外国人であれば、本名ではなく通称名で法人登記申請が可能です。ただし、役所に届け出て、住民票に通称名を登録していることが条件です。

④個人事業主として起業する

法人登記申請とは、その名の通り法人にのみ課せられた義務です。したがって、法人を設立せずに個人事業主として事業を開始すれば個人情報が開示されることはありません。ただし、介護事業者など法人を設立しなければならない業種もありますし、法人と個人事業主では税率や経費の仕組みが異なるため、法人を設立するよりも利益が減る可能性もあります。また、法人と比べて社会的な信用度が低いなどのデメリットもありますし、様々な観点から検討が必要です。

まとめ

法人謄本の個人情報は、合理的な理由に基づいて表示されています。しかし、個人のプライバシーが重要視される現在、法人謄本に個人情報を表示する必要性についても見直すときが来ているのかもしれません。

2022年9月の法改正では、「法人謄本の閲覧サービスで代表者の住所を表示しない」という省令案は見送られましたが、個人情報全面非表示の議論が終わったわけではなく、引き続き検討していく議題とされました。時代の流れや世論の動きによっては、近い将来、個人情報の全面非表示が実現するかもしれません。

個人情報が非表示になり安心して法人を設立できる体制が整えば、新たに起業する女性が増え、魅力的な商品やサービスも登場してくるでしょう。法人謄本の個人情報問題が解決され、経済の活性化へつながることも期待して、今後の法改正に注目したいですね。

 

今回はここまで。
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