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中小企業ができる社会保険料の節約方法

メガバンカー takuo

2021.10.27

日本では会社員や公務員は強制的に国民保険に加入し、社会保険料を支払っています。国の社会保険制度は国民の保険料と税金によって財源が確保されており、健康保険組合連合会によれば、平均保険料率は2020年度まで13年連続で上昇しています。
日本では今後超高齢化社会が到来し、社会保障に関する予算は膨張を続けると予想されており、社会保険料は増額の可能性が濃厚です。
健康保険料と厚生年金保険料は従業員の標準報酬月額と各都道府県の協会・厚生労働省が定めた保険料率によって決定されますが、これらの社会保険料は労使折半となっており、特に中小企業にとっては大きな負担となっています。

この記事では、中小企業にとって大きな負担となっている社会保険料の節約方法をお伝えします。

合法的に社会保険料を下げる方法

中小企業にとって経済的負担の大きい社会保険料を合法的に削減するためにはどうすればよいでしょうか。定番の社会保険料の節約方法は以下の通りです。

4月から6月の残業を減らす

社会保険料は4月から6月の給与の平均額を基準に決定されます。したがって、4月から6月の給与が少ないほど社会保険料の支払額が減少します。基本給は変更せず、4月から6月は残業代を抑制して、トータルの給与を抑制するという方法です。

7月以降に昇進をさせる

先ほどのとおり、社会保険料は4月から6月の給与の平均額を基準に決定されます。したがって、4月に昇進して基本給が上がると、社会保険料の支払額が増加します。そのため、4月に設定している昇給月を7月以降に変更することで、最長で12ヶ月間は社会保険料の支払額を減らすことができます。

給与と賞与を合算する

この方法は社長や役員など高額な役員報酬を受け取っている方が対象となります。役員報酬に掛けられる社会保険料の上限は健康保険料は1年間の累計で573万円、厚生年金は1回で150万円となっています。この金額が上限ですので、超過分は社会保険料はかかりません。したがって、年間の総支給額は変更せずに、給与を減額し、賞与を増額することで支払う社会保険料を削減する方法があります。

賞与を削減して退職金を増やす

賞与と退職金の社会保険料の取り扱いの違いを利用した節約方法です。賞与には社会保険料はかかる一方で退職金には社会保険料がかかりません。したがって、賞与を削減して、削減した分を退職金に上乗せすることで社会保険料の支払額を削減できます。賞与の減額分は退職金の原資として積み立てをすれば、上手に制度を運用できます。社内に積み立てる方法もありますが、社外積立として中小企業退職金共済機構等に預けてもいいでしょう。

グレーゾーンだが社会保険料を下げる方法

ここからご紹介する方法はあくまでグレーゾーンです。経営者向けに「社会保険料を下げる方法」と題してセミナーなども開催されているもので、その内容を簡単に説明します。確実に違法とまでは言えませんが、積極的に適用する話ではないと思います。

2箇所給与にする

2箇所給与とは名前の通り、本来1社から支払われる給与を、2箇所以上の複数の企業から別々に支給し、そのうち1社のみで社会保険加入の手続きを行う方法です。給与が分散されることで1社当たりの給与支給額は小さくなり、保険料の算定対象となる給与額が低くなります。

例えば、東京都の場合だと、A社で200,000円の給与を受け取っている役員にかかる社会保険料は36,600円であり、このうち会社負担分は18,300円となります。しかし、役員に対してA社から150,000円、B社から50,000円の給与を支払うことで負担額はA社13,725円、B社0円ですから、合計で18,300円-13,725円=4,574円の節約になります。

個人委託契約に切り替えてもらう

個人委託契約とはいわゆるフリーランスのことです。会社員として勤務する従業員には社会保険が適用されますが、フリーランスの場合は適用されないため、従業員をフリーランスに切り替えてもらえれば、そのフリーランス自身が自己負担で国民健康保険及び国民年金へ加入することになります。そのため、会社としては社会保険料の負担が生じません。経営再建中の企業で、従業員として雇用を維持できない場合の苦肉の策というイメージがあります。

社会保険料を節約することのリスク

ここまで社会保険料を節約する方法について解説しましたが、社会保険料の節約によるリスクが全くないわけではありません。社会保険料制度は支払とリターンがあるため、支払が減れば、その分だけ受けられる恩恵が少なくなるからです。ここからは、従業員や企業が直面するリスクについて説明します。これらのリスクを、しっかりと理解しておきましょう。

従業員のリスク

従業員のリスクとしては、定年退職後の年金支給額が減少します。会社員が加入する厚生年金は保険料に比例して支給額が増額されます。したがって、支払った社会保険料が減少すると、その分だけ支給される年金は減額されます。

また、厚生年金と同様に障害年金や遺族年金の支給額も減額されます。例えば、夫婦のうち夫が死亡した際に妻に支給される遺族年金は、その後の妻や子供の生活にとって重要な資金となりますが、これらが減額されることになります。

さらに、年金だけではなく、失業保険の支給額も少なくなります。不況など自分ではどうしようもない原因で失業した場合に支給額が減額される影響は大きいといえるでしょう。

会社のリスク

会社としても、社会保険料の節約によるリスクはあります。最も大きなリスクは、従業員の信頼をなくすことでしょう。社会保険料の節約による従業員のリスクを考えると、節約は必ずしも正しい選択とは限りません。自分の勤務する会社が従業員のリスクを承知の上で社会保険料を節約した場合に従業員はどのような反応を示すでしょうか。勤労意欲の減退や会社に対する不信感を招き、社員の大量離職に発展するかもしれません。

また、社会保険料の支払額が減少することによって年金事務所による社会保険指導調査の対象になる可能性もあります。完全に合法な方法で節約していれば、問題ありませんが、違法であることが発覚すると遡及して完全納付を要求され、罰金の支払対象となってしまいます。

まとめ

社会保険料は、特に中小企業にとっては本当に負担の大きい支出なので、社会保険料の節約を検討する経営者は少なくありません。節税と同様に余計な出費を抑制して、コストカットをすることは経営者の重要な仕事であり、社会保険料の計算方法や制度などを理解することによって社会保険料を節約することは大切なことでしょう。ただし、グレーゾーンの節約方法に関してはデメリットもあるので、慎重な検討が必要です。また、社会保険料を節約する際には会社の利益だけではなく、従業員に与える影響について考えましょう。短期的には会社に利益をもたらしますが、従業員が会社の節約方針に不満を抱けば、長期的にはリスクが大きくなります。

 

今回はここまで。
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この記事を書いた人

メガバンカー takuo

某メガバンクに勤務していたバンカー。窓口業務・融資・資産承継・事業承継など、あらゆる仕事でハイレベルな実績を残す。起業家や経営者の成功を願い、現役のときには話せなかった独自のノウハウを紹介する。

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