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EBITDA(イービットディーエー)とは

メガバンカー takuo

2021.12.06

EBITDA(イービットディーエー)とは、M&Aにおいて企業価値を測る指標の一つとして利用されており、上場企業の決算説明資料を読むとEBITDAがしばしば登場します。主に上場企業やグローバル企業で使用されている指標ですが、中小企業でもM&Aによる事業承継を検討したことがある経営者の方はご存知かもしれません。

EBITDAは営業利益や経常利益と並んで企業を評価する重要な指標の一つであり、中小企業であってもM&Aを検討している場合や今後グローバルに事業を展開することを検討している場合はぜひ理解しておきたい指標です。

今回の記事ではEBITDAや計算方法、メリットなどについて解説します。EBITDAについて「まったく知らない」という経営者の方はもちろん、すでに知っている経営者の方にとっても参考になる内容となっておりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

EBITDAとは?

EBITDAは、PERや総資本回転率のように財務分析上の指標です。従来、日本においてEBITDAは重視されていませんでしたが、M&Aの成立件数が増加するとともに企業価値を正確に評価する指標として活用され始めました。ここからはEBITDAの読み方はその意味について解説します。

EBITDAの読み方

EBITDAとは”Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization”の略称です。それぞれの単語の意味は以下のとおりです。

Earnings=利益
Before=前
Interest=金利
Taxes= 税金
Depreciation=建物・設備などの有形固定資産の償却費
Amortization=ソフトウェア・のれんなどの無形固定資産の償却費

つまり、EBITDAを日本語に訳すと「金利・税金・有形固定資産・無形固定資産の償却費を差し引く前の利益」となります。EBITDAを日本語読みするときには「イービットディーエー」や「イービッター」などと呼ばれています。

EBITDAの意味

EBITDAとは財務分析上の指標の一つであり、税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します。簡便な方法として、営業利益に減価償却費を加えて計算します

金利水準や法人税率、減価償却の方法は国によって異なりますので、従来の指標では国や地域の異なる企業の収益力を単純比較することはできませんでした。以前はそれで問題はありませんでしたが、2000年以降、クロスボーダーのM&Aが多数実施されるようになってから、グローバル規模で比較ができないと困る投資ファンド(投資家)が増えてきました。

そこで、国ごとの違いを最小限に抑えた控除前の利益であるEBITDAが有用な指標として重要視されるようになりました。EBITDAは、日本企業だけではなく、会計基準の異なるグローバル企業の評価においても有益とされており、国や地域の異なる企業の収益力でも比較が可能です

計算方法については後述しますが、EBITDAは営業利益と考え方が似ており、企業の損益計算書(PL)からも容易に計算ができる指標となります。

EBITDAの計算方法

EBITDAは、税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益のことですが、営業利益や経常利益から計算する方法などいくつかの計算方法があります。代表的な計算方法は以下の3つです。

1.税引前当期純利益+法人税等+支払利息+減価償却費
2.経常利益+支払利息+減価償却費
3.営業利益+減価償却費

2つ目の計算式は、創業間もないスタートアップ企業や事業拡大のために投資を行っている企業などの企業価値を測るときに活用されます。こういった企業は資金調達のために有利子負債が大きくなる傾向にあり、支払利息が会社の利益を目減りさせます。したがって、支払利息を差し引いた計算式となります。

3つ目の計算式は、最も簡単な計算式であり、実務上最も多く使われる計算方法です。EBITDAを理解するにはこの計算式で求めるという理解で問題ありません。営業利益は法人税や為替差損益などを差し引く前の利益であり、これに建物・設備などの有形固定資産の償却費やソフトウェア・のれんなどの無形固定資産の償却費を加算して求めます。

EBITDA活用のメリット

ここまでEBITDAの意味や計算方法について解説しましたが、EBITDAが広く使われている背景には明確な理由があります。EBITDA活用のメリットについて解説します。

メリット1.国際比較が可能

日本でEBITDAが普及し始めたのはクロスボーダーのM&Aが増加したためです。つまり、外国企業の収益力を測るためにEBITDAが活用されているのです。通常、企業の収益力を測るためには当期純利益が参考にされますが、当期純利益は法人税や支払利息、減価償却費が差し引かれています。

しかし、金利水準や法人税率、減価償却の方法は国によって異なりますので、当期純利益は外国企業の収益力を測る指標として適していません。一方で、EBITDAは税制や金利水準などの国ごとの違いを最小限に抑えた利益ですので、外国企業であっても収益力を測ることができます

メリット2.正確な企業の収益性の判断が可能

EBITDAは営業利益に減価償却費を加算して求めますので、営業利益と考え方が似ています。したがって、営業利益を収益力を測る指標として活用してはどうかと考える人がいるかもしれません。しかし、営業利益に着目すると正確な利益が判断できません。なぜなら、営業利益は売上総利益ー販管費で求められるのですが、販管費には減価償却費が含まれているからです。

大型の設備投資を実施すると減価償却費が大きくなるため、製造業や建築業など先行投資として巨額の設備投資が必要になる業種は、投資をしてから数年間は多額の減価償却費が計上され、営業利益が少なくなります。

逆に年数が経過すると計上する減価償却費が減少し、営業利益が増加するので、業績が伸びているような錯覚に陥ります。つまり、営業利益に着目していると大規模投資があったときに減価償却費の多寡の影響を受けてしまうのです。その点、EBITDAはイレギュラーな大規模投資による企業価値への影響を取り除くことができますので、中朝的な視点で正確な企業価値を評価することが可能になります

メリット3 償却方法の違いを無視できる

そもそも減価償却とは、機械設備や自動車などの長期にわたって使用する固定資産について、取得した段階で全額計上せずに資産を使用できる期間で分割して計上する会計手法です。

減価償却には定額法と定率法の2種類があり、どちらの償却方法を選ぶかは資産によって決められている場合と自由に選べる場合があります。定額法とは単純に「購入価格÷耐用年数」という計算式で毎年決まった額の減価償却を行いますが、定率法とは毎年一定の割合で減価償却費が少なくなるように計算する方法です。定率法を採用した場合は初期の段階での減価償却費が大きいため、毎年の減価償却額が異なります。したがって、減価償却費が含まれている以上、営業利益以下の指標を収益力を正確に図るための指標として活用することは難しいのです。しかし、EBITDAを活用することでそのような償却方法の違いを無視して、正確な収益力を測ることができます。

EBITDA活用のデメリット

EBITDAには、過剰な設備投資による損失をマイナス要因として取り込むことができないという欠点があります。減価償却費の前提として、「資産は将来に継続的に利益をもたらすものである」という解釈があります。しかし、現実には将来への投資と考えて設備投資を実施したものの、結果的には過剰な投資であり、損失となってしまう場合もあります。

EBITDAでは、そのような損失を認識できないというデメリットがあります。つまり、将来に利益を生み出すわけではない過剰な投資を行った場合、本来は収益力が低下しているにもかかわらず、EBITDAでは安定的な成長をしているように見せることができます。

この点については、投資の神様として有名なウォーレン・バフェット氏も「財務指標として一般的ではない調整後EBITDAを使用した収益の予測は不正確であり、ばかげている」と述べて、EBITDAの過信には警鐘を鳴らしています。

EBITDAは数多くある財務分析指標の1つ

EBITDAは企業価値を測る指標の一つとして利用されており、税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します。簡便には営業利益に減価償却費を加えて計算します。EBITDAには国際比較が可能、正確な企業の収益性の判断が可能、償却方法の違いを無視できるといったメリットがある一方で、過剰な設備投資による損失をマイナス要因として取り込むことができないというデメリットもあります。

また、EBITDAの計算式を見れば明らかですが、粗い指標であり、あくまで数多くある財務分析指標の1つとして考える方が賢明です。企業の収益力を測るためにはほかの利益指標も見て総合的に判断することが大切でしょう。

今回はここまで。
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この記事を書いた人

メガバンカー takuo

某メガバンクに勤務していたバンカー。窓口業務・融資・資産承継・事業承継など、あらゆる仕事でハイレベルな実績を残す。起業家や経営者の成功を願い、現役のときには話せなかった独自のノウハウを紹介する。

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