起業家に伝えたい大切なこと

起業家を悩ます詐欺・トラブル5つの事例

起業家バンク事務局

トラブル回避

この記事では、起業家に知って欲しい「詐欺・トラブルの5つの事例」を解説しています。
また詐欺・トラブルに遭わないための対策も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

 

本題の前に、まず、とても重要なことをお伝えします。

大切な話なので、しっかりとポイントを押さえて欲しいと思います。

事業者の自覚をもつ

起業家は事業者である

消費者と事業者のあいだで消費者に不利な契約が結ばれた場合、契約は無効となります。
消費者は「消費者基本法」によって保護されるからです。

 

起業家は、自ら事業を起こして収入を得ようとする事業者です。

事業者間の取引であれば、一方的に不利な契約であっても「契約自由の原則」によって有効な契約となりえます。

つまり、原則として、起業家が事業者として行う契約は「消費者基本法」で保護されず、
一方的に不利な契約であっても有効に成立します。

 

個人事業主も事業者である

消費者の利益保護について具体的に定めているのは「消費者契約法」です。主に契約の取消しと契約条項の無効などを定めています。

 

消費者契約法の第2条には、消費者の定義事業者の定義があります。

第2条 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
2 この法律(第43条第2項第2号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。

 

よく誤解されていますが、会社だけが事業者なのではありません。
消費者契約法においては、個人事業主も事業者であり消費者ではありません

 

事業者間の取引にはクーリングオフが適用されない

事業者と消費者のちがいで何が一番問題になるかというと、
事業者間の取引にはクーリングオフが適用されないということです。

クーリングオフとは、契約を締結するに際し、特定の取引にのみ申込みの撤回、または契約の解除を認める制度のことです。
契約書面を受け取った日を含め8日以内(内職・モニター商法、マルチ商法は20日以内)に契約を解約したい場合は書面で通知すると契約を解約できます。

 

起業家を欺こうとしている相手は「事業者間の契約は取り消せない」ことを知っています。
巧みなセールストークに惑わされたり、強引に押し切られたりしても、
契約を簡単に取り消
すことはできません

 

起業家は「一般消費者」ではないことを、まず押さえておきましょう。

 

詐欺・トラブルの5つの事例

タイトルには詐欺と書きましたが、たとえ一方的に不利な契約であっても
事業者がお互い納得していれば詐欺ではなくなります。
契約を交わすということは「納得しました」という意思表示なので注意しましょう。

事業者間の取引でも「詐欺」に該当すれば契約を取り消すことができますが、詐欺の立証はとても難しいことです。一度、支払ったお金は取り戻せないと考えておきましょう。

事例1.請負契約

請負契約とは「一方(請負人)がある仕事を完成させることを約束し、もう一方(起業家)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを内容とする契約」です。
主に工事契約が該当します。

事務所や店舗の内装工事では、工事内容に関する詐欺やトラブルが発生します。
具体的には「依頼していた工事と異なる」「依頼していない工事分を上乗せされて請求があった」といったトラブルです。

このようなトラブルは請負契約書を作らず、口約束で工事を進めたときに起こります。
また請負契約を結んだ後でも、やたらと不安をあおり必要のない追加工事を促すケースもあります。

さらにお金の支払い時期(着手金など)に関するトラブルもあります。
地域によって相場は異なりますが、着手金は多くても3~4割ほどです。原則として、請負契約は仕事の完成に対して報酬を支払うものなので、着手金を過大に請求される場合は契約内容を見直した方が良いでしょう。

 

関連記事:
起業の方法を学ぶ|工事の見積もりを依頼するときの3つの手順

 

事例2.取材商法

取材商法とは、経済雑誌への掲載料を事業者に支払わせる手法です。
実際に掲載されるならば詐欺には当たりませんが、前金だけを払わせて雑誌が出版されないという本当の詐欺もあるようです。

 

出版社によって若干異なりますが、手法はほとんど同じです。
大まかな流れを知ってほしいので時系列で紹介します。

 

まず雑誌社の記者から「あなたの事業を経済雑誌に取り上げたい」という電話が突然かかってきます。

電話口でインタビュアーは芸能人であることを知らされ、その方と実際に会って話ができることを告げられます。
ただし芸能人と言っても、すでにテレビで観ることはない方ばかりで、世代が違うと名前すら知らないかもしれません。

 

実際にインタビューを受けると、本当に芸能人の方が来られます。
一通り話が終わると担当記者だけ残り、商談が始まります。
記者からは有名企業が掲載されている過去の雑誌をサンプルとして見せられます。
起業家に有名企業が出ている格式の高い経済雑誌なんだと思わせることが目的です。

雑誌への掲載料の話になり、たとえば見開き1ページでカラー掲載にすると100万円前後の掲載料がかかるなど、料金プランの話になります。

すでに芸能人と会っていますし、インタビューも終わっているので起業家としても断りづらく、数十万円の掲載料で決着するというのが流れになります。

 

もちろん広告効果が期待できるならば問題はありません。
しかし、雑誌の発行部数が少なかったり、雑誌の読み手と自社のターゲットが整合しなかったりする場合は、
広告費用を上回る効果は期待できません。

資本金に余裕のある企業、ちょっと変わった商売をしている起業家、認知度を上げようと張り切っているベンチャー企業は、標的になりやすいので特に注意しましょう。

 

事例3.高額な経営塾・経営セミナー

2014年版の中小企業白書によると、
起業時の課題に経営に関する知識不足・ノウハウ不足をあげた人は、
男性で36.6%、女性で41.7%となっています。
また、事業に関する専門知識・ノウハウ不足をあげた人は
男性で32.0%、女性で38.2%となっています。

 

起業家の約4割は、経営や事業に関する知識不足・ノウハウ不足を感じており、特に女性はその傾向が強いと言えます。

経営についての知識に不安があるから勉強したいと考えるのは当然の流れであり、経営塾やセミナーで学習したいという気持ちになります。
それが高額であれば、学習効果に対する期待も自然と高まるでしょう。

しかし、高額だからといって必ずしも内容も充実しているわけではありません。
高額な資金を払わずとも、経営や事業について学習することは可能です。

 

このケースにおいては、
起業塾・起業セミナーならば、起業する前なので、起業家は「消費者」に該当し、クーリングオフの対象となります。
くどいようですが、起業後の場合は事業者間契約にあたる場合があるので注意しましょう。

 

事例4.社員による社内資産の持ち逃げ

ここでいう社内資産とは、
お金、ノウハウ、優秀な社員、取引先などです。
社内で起こるトラブルで、事業が上手く進んでいるときにも、上手くいかずに苦しんでいるときにも起こります。

人と人との問題なので原因も対策もさまざまです。

最も関連する見聞は、ソフトバンクの孫正義社長の話だと思います。
それは、志を共有できなければ、社員の裏切りや離反は避けられないというものです。

社員や創業メンバーを募るときは、スキルの多様性よりも、志や価値観を重視した方が上手くいくかもしれません。

 

事例5.病気やケガ

保険の世界では「大数の法則」がよく語られます。
個々人を観察しても分からないことでも、大きなグループとして観察すれば、ある事象の発生する確率が推定できるという法則です。
保険会社はこの法則を使って死亡する確率、障害を負う確率を計算しています。

この法則にしたがって起業家をグループ化すると、
起業家のうち一定数は死亡または障害を負っていることになります
もちろん非常に少数ですが、事例としても存在します。

 

起業家には雇用保険や労災保険が適用されません。
また個人事業主であれば公的保障である傷病手当金も支給されません。そんな起業家に万が一のことがあると、事業の継続どころか個人の生活すら危ぶまれます。

起業家に家族がいるとき、金融機関からお金を借りるときなどは、
保険でリスクヘッジをしていた方が安心です。

詳細は関連記事にまとめているので掲載しておきます。

 

関連記事:
起業するとき保険の見直しは絶対必要|1級FPが解説

 

詐欺やトラブルに遭わないための対策

対策1.行動心理学を学ぶ

ここでいう行動心理学とは、人の心の動きをマーケティングに応用するものです。

 

たとえば「この極秘情報は君たちは教えられない」と言われると、余計にそれが知りたくなるような心理状況です。(カリギュラ効果)

 

このような行動心理学を知っておくと、詐欺やトラブルに巻き込まれそうになったとき冷静に対応することができます
先ほどの事例を参考に、代表的な心理効果を紹介します。

 

テンションリダクション効果

テンションリダクション効果とは、人が極度の緊張状態から解放された後、その反動で気が抜けてしまい、注意力や思考力が低下するという現象です。

結婚式、自動車、マイホームなど高額な商品を買ったあと、数万円のオプションが安く感じたという経験はありませんか。これがテンションリダクションの状態です。

高額な内装工事などを契約したあとは、テンションリダクションの状態になりがちです。
少額の追加工事を安く感じていませんか?
追加工事を促されたときは、本当に必要な工事なのか時間をおいて慎重に確かめましょう。

ハロー効果

ハロー効果とは、ある一つの特徴から全体を評価してしまうという現象です。

取材商法では、出版社は有名企業、有名人の名前を持ち出します。
これはハロー効果を狙って話しているのです。

有名企業が掲載されている経済雑誌。インタビュアーは芸能人。
日常生活で耳にすることはないので、このフレーズだけが頭に残ります。

それだけで
出版社に対する評価を上げていませんか?
雑誌の掲載料は「掲載効果」で評価し、他の情報に惑わされないようにしましょう。

ヴェブレン効果

ヴェブレン効果とは、商品やサービスの価格が高いほど満足度が高まるという現象です。

人が持つ「見せびらかしたい」という顕示欲から生まれます。
宝石や高級ブランドを買うのは、このヴェブレン効果が働いているからだと言われます。

高額の経営塾や経営セミナーが、低額のものよりも優れていると考えていませんか?
そのときはヴェブレン効果に支配されていないか再確認しましょう。

 

対策2.鉄のおきてを作る

自分で自分を縛る「鉄のおきて」を作りましょう。
そのおきてを守って経営していれば、詐欺やトラブルに巻き込まれる確率は一段と低くなります。

起業家にぜひ守って欲しい「鉄のおきて」を紹介します。

絶対に即断即決をしない!

詐欺やトラブルに巻き込まれる起業家は、
たいてい即断即決をしています。

即断即決を求められても応じてはいけません。冷静さを欠いた状態で即断即決をすると大失敗します。

即断即決を求められたときは、
「自分(弊社)には即決をしないルールがある」と一点張りで突っぱねましょう。

ただし、即決できないと事業運営に支障が出ることもあるので、
10万円までであれば即決できるといったように、あらかじめ金額を決めておきましょう。

不安を感じたら人を頼る!

詐欺やトラブルに巻き込まれる起業家の特徴は、
個人事業主、少人数で設立した会社の代表者
です。

初めから上手く経営できる起業家なんていません。
親族や学校の先輩、前の会社の上司などに起業して数年経っている方はいないでしょうか。
そのような方がいなければ公的機関や士業をしている専門家でもかまいません。

不安や悩みごとだけではなく、普段の出来事を気軽に話せる人物が近くにいると非常に安心です。

 

まとめ

以上で、詐欺やトラブルの事例とその対策の解説を終わります。
この内容によって一人でも多くの起業家が詐欺やトラブルを避けることができれば幸いです。

 

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