起業家に伝えたい大切なこと

起業してIPOを実現するまでの基本的な流れ

起業家バンク事務局

2021.12.01

IPOとは株式公開のことであり、”Initial Public Offering”の略称です。Initialは「初めて」、Publicは「公に」、Offeringは「募集する」の意であり、IPOとは自社株式の譲渡に係る制限を無くし、市場に自由に売買できるようにすることです。

IPO実施によって資金調達だけではなく、株主、会社、従業員それぞれに有形無形の様々なメリットがあります。この記事では、IPOの基本的なメリットや起業してからIPOを実現するまでの流れについて解説しています。

IPOを実施するメリット

IPOを実施することによって得られるメリットは、以下のようなものがあります。

【会社】が得られるメリット

・社会的信用の向上に伴う大企業・海外企業との取引機会の増大
・社会的信用の向上に伴う採用応募者の増加
・株式発行などの直接金融の選択肢が増え、返済不要な資金調達が可能になる
・組織的運営、コンプライアンス強化による内部管理体制の強化

【経営者】が得られるメリット

・持ち株の売却による株式の現金化
・「上場企業」という社会的地位の向上に伴う従業員のモチベーションやモラルの向上
・ストックオプションや従業員持株会の活用による従業員の福利厚生の整備

IPOのために必要なこと

上記のように、会社や経営者に大きなメリットをもたらすIPOですが、IPOの実施にあたっては厳しい条件があります。主な条件は以下のとおりです。

経営者の明確な意志

IPO実施には通過すべき審査があり、審査に向けて社内の体制を整えることは容易ではありません。一朝一夕で達成できる目標ではなく、数年単位の計画が必要になります。その厳しさゆえに、上場を目指す企業が途上で上場を断念することも珍しいことではありません。上場するには、上場に対する経営者の強い意志とリーダーシップが必要といえるでしょう。

審査基準の充足

証券取引所等による審査を通過しないと上場できません。例えば、市場には上場一部、上場二部、マザーズ、ジャスダックなどがありますが、市場によって上場時の株主数や時価総額、純資産、利益の金額などの数値基準が定められています。

起業した段階で目指すことになる新興市場(マザーズ、ジャスダック)に上場するには、株主数が200人以上必要です。さらに上場二部は800人以上、上場一部は2,200人以上と、求められる株主数はシビアです。多くのスタートアップやベンチャー企業が苦労するのはこの数値基準の達成です。

上記の数値基準に加え、コーポレートガバナンスおよび内部管理体制を整備する必要があります。整備した上で実際に運用し、適切に機能できること、企業内容やリスク情報についての開示が適切であること、事業計画を合理的に作成していることなどが必須となります。

さらに上場した後に株式の買い手が見つからないと株価及び企業価値が下落しますので、投資家に投資の魅力を伝えるためのIR 活動が必要です。具体的には投資意思決定に役立つ財務情報や中長期的な成長戦略について投資家目線でわかりやすく、かつ魅力的に開示します 。

また、上場したらそれで終わりではありません。
上場企業には市場の透明性を確保するために様々な規制が設けられており、継続的に対応する必要があります。有価証券報告書等の財務・非財務情報の開示、役員報酬に関する情報開示、社外取締役の設置などの規制は増加傾向にあります 。

各種金融機関の協力

株式上場にあたっては主幹事証券会社、監査法人、信託銀行など多くの関係者の協力が必要です。例えば、主幹事となる証券会社は特別利害関係者との取引について検証します。監査法人は監査意見を表明し、信託銀行は株主名簿作成事務など株主に付与される権利を遂行するための手続きを担います。

また、上場申請の際には主幹事証券会社による審査が必要です。これら主幹事証券会社、監査法人は当社について投資家の立場から、つまり金融商品として評価を行います。上場の準備を進める段階で主幹事となる証券会社や事務を委託する信託銀行とリレーション構築する必要があります。

起業してから準備できること

ここまで上場にあたって必要になる具体的な手続きについて解説しましたが、実際には、会社を設立してから上場を果たすまでは短くても20年以上、実際の IPO 準備期間は3年〜5年と言われています。このように非常に長い道のりですので、起業したばかりは経営者にとっては遠い未来の話のように感じるかもしれません。

しかし、創業間もない場合でも準備できることはあります。上述した株式公開のための条件を踏まえて、具体的な準備内容について解説します。

現状把握をもとに数値目標を立てる

創業から時期が浅い企業にとっていきなり上場一部を目指すことは現実的ではありません。したがって、最初は新興市場と言われるマザーズ市場への上場が課題となるでしょう。マザーズ市場への上場のためには数値目標として以下の数値があります。

・株主数200人以上
・流通株式数2000単位以上
・流通株式時価総額5億円以上
・時価総額10億円以上
・公募増資500単位以上
・新規上場申請日から起算して1年前から取締役会を設置して継続的に事業活動を行っている

このように起業してから最も近いマザーズ上場の審査基準もなかなか厳しいです。特に株主数200人以上、流通株式時価総額5億円以上、時価総額10億円以上の壁は想像以上に大きく、途中で挫折する経営者も多くいます。大事なことは現在の会社の状況に照らし合わせて着実に審査基準に近づくことです。例えば、株主を増やすために個人投資家などに積極的な売り込みをしたり、投資家の目を引くような PR を行うなどです。

ただし、ここで注意したいのが、上場が目的化しないようにすることです。野心のある起業家にとっては上場は一番のゴールであり、上場を急ぎたい気持ちがあるのは仕方ありません。しかし、現実では創業間もない企業は「会社として存続すること」を優先すべきです。審査基準に適合するために数値上の目標ばかり見ているのではなく、企業経営に専念し、企業価値の向上に集中しましょう

金融機関とのリレーション構築

上述のように上場にあたっては証券会社や信託銀行など金融機関の協力が不可欠です。それも「証券会社ならどこでもいい」という話ではありません。例えば、 LINE 、マクロミル、ソフトバンクなど一流企業の主幹事証券会社は野村証券や大和証券などの大手証券会社です。

上場は一つの区切りではありますが、企業の長い歴史から見れば、あくまでもスタート時点であり、上場後も証券会社を通じて株式が市場で流通するわけですから、取り扱っている金融商品の種類が豊富かつ信頼と実績のある大手の証券会社が望ましいといえます。

一般的に大手と言われる証券会社あれば安心して主幹事を任せることができるでしょう。特に三菱UFJモルガン・スタンレー証券、みずほ証券、SMBC 日興証券はメガバンク系証券ですのでグループ会社に銀行や信託銀行があります。まずは創業から日が浅い段階で銀行と取引を開始し、上場の際にはグループ内証券会社・信託銀行から上場のサポートを受けるという流れが最もオーソドックスな方法かもしれません。

ベンチャーキャピタルの出資を受ける

起業家の方はご存知の方が多いと思いますが、ベンチャーキャピタルの出資を受けるという選択肢もあります。ベンチャーキャピタルとはハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社(投資ファンド)のことです。主に高い成長性が見込める、もしくはすでに高い成長率を記録してる未上場企業に対して、普通株式や優先株式などを取得して資金を投下します。最終的には株式上場やM&Aによって取得した株式を売却するとでキャピタルゲインの獲得を狙っています。

ベンチャーキャピタルは単に資金を投下するだけでなく、 IPO実施に向けての取引先の紹介や経営コンサルティングなどの機能を提供し、投資先の企業価値の向上を図ります。これをバリューアップ活動といいますが、さらにベンチャーキャピタルから役員を派遣し、経営陣に対して監視・コントロール・指導を行うこともあります。ベンチャーキャピタルの目的はキャピタルゲインの獲得であり、その手段としてIPOがあります。目的は違えど、進む方向は経営者と同じですので、IPO を目指す経営者にとっては有効な方法と言えるでしょう。

ただし、ベンチャーキャピタルも慈善事業として投資をしているわけではなく、 IPO実施のためにベンチャーキャピタルが示す経営方針に従う必要があります。起業家として「自由な経営」を目指すのか、「短期的な成長」を目指すのかによって活用の是非が異なります。

IPOに向けて着実に準備を進めよう

起業家にとって IPO の実施は最も分かりやすいゴールです。上場には様々な課題がありますが、創業当時から準備をすることによって着実に近づくことができます。ただし、IPO の実施よりも、企業価値の向上に注力することが先決です。企業価値を向上させることが、結果的には IPOを実施にあたっての最短ルートといえるでしょう。

 

今回はここまで。
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