起業家に伝えたい大切なこと

起業家が信用保証制度を絶対に活用すべきそのワケ

メガバンカー takuo

会社設立のメリット・デメリット

起業家が創業時に受けられる融資制度の代表的なものとして日本政策金融公庫による創業融資制度があります。そして、もう一つ信用保証協会による信用保証制度というものがあります。信用保証協会は事業者が融資を受けやすくなるように協力してくれる欠かせない存在です。

日本の企業の数は約360万社と言われていますが、そのうち99%以上は中小企業や小規模事業者で、このうち約34%の約122万社が信用保証協会の保証を利用して融資を受けており、中小企業にとって無くてはならない存在と言えます

しかしながら、多くの起業家は信用保証協会について、あまり知らないというのが現状です。今回はこの「遠くて近い存在」とも言える信用保証協会について解説します。

信用保証協会とは

信用保証協会とは、中小企業や小規模事業者が金融機関から事業資金の融資を受ける時に、いわば保証人の役割を担ってくれる機関、事業者の借入を円滑に行えるようサポートしてくれる公的機関となります。大企業と比較すると信用力が劣ってしまう中小企業・小規模事業者や創業者などが円滑に資金調達を出来ることが目的として設立されました。

47都道府県の他に、横浜市や川崎市、名古屋市、岐阜市に設置されており、企業の成長や金融の面から支援してくれます。信用保証協会は全国にありますが、利用できるのは基本的に事業を営んでいるエリアを管轄する信用保証協会ですので、本店所在地が東京の会社であれば東京信用保証協会を利用することになります。しかし、必ずしも本店所在地に限定されるわけではなく、事業実態があることを前提として、支店や営業店、店舗があるエリアの信用保証協会も利用できます。例えば、本店所在地が東京の会社であっても、店舗が横浜にある場合には、東京信用保証協会に加えて、横浜市信用保証協会と神奈川県信用保証協会も利用できます。また、個人事業者であれば事業主の住居地でも利用できます。

信用保証制度の仕組み

まず事業者が信用保証協会に保証申込みをします。信用保証協会は企業の事業内容・経営計画をチェックし、保証をするかどうか判断します。判断した後は、金融機関に連絡をします。しかし、これはあくまで手続き上の話であって、実務上は、中小企業が銀行を経由して信用保証協会に保証の申込みをするのが一般的です。

保証するとなった場合は信用保証書の交付を受けた金融機関が事業者に融資をします。事業主は返済の条件に基づいて、借入金を金融機関へ返済します。もしも事業者が金融機関に返済できなくなった場合、信用保証協会は事業者の代わりに金融機関に借入金を返済します。これを代位弁済と言います。保証協会の保証率は原則8割ですので、融資残高の8割を銀行に返済してくれますが、2割は残るので、残額については事業者が自力で銀行に返済していくことになります。

一方、100%保証の制度もあり、例として創業融資やコロナ対応の融資であるセーフティネット保証の一部の制度が100%保証となっています。しかし、8割もしくは100%信用保証協会が代位弁済してくれると言っても借金がなくなるわけではありません。保証協会が事業者の代わりに金融機関へ返済を行った場合、保証協会に求償権が発生するため、事業者は保証協会に返済を続けることになります。

信用保証料

信用保証協会を利用する場合には信用保証料がかかります。信用保証料は融資金額から一括で差し引かれて支払うのが一般的です。信用保証料は分割計数などの計算式が有り、おおよその保証料を計算するのは困難ですが、目安としては融資額の1%程度です。さらに会社の業績によって保証料の率が変わり、基本的には業績がよい会社は保証料率が低く、業績が悪いと保証料率が高くなります。

信用保証協会の社会的意義

それでは、なぜ信用保証協会は事業者と金融機関の間に入ってくれるのでしょうか?

それは、金融機関が事業者に対して、なかなか貸付を実行できないからです。

金融機関は、貸したお金をしっかり返してくれると判断できる事業者に貸付を実行します。しかし、財務体質が脆弱であることの多い起業家や中小企業の場合は、貸したお金を回収できない確率が高いのです。そのため、民間銀行は、起業家や中小企業の事業主に対して、なかなか融資を行うことが出来ないというのが現状です。そこで、信用保証協会が事業者と金融機関の間に立ち、保証し返済をサポートすることで、金融機関が融資実行に踏み切りやすい状況を作り出しているのです。

信用保証協会を利用するメリット

信用保証制度を利用することによるメリットは大きく4つあります。

1.融資を受けやすくなる

上述のように業歴が浅かったり、業績が十分ではない状況であれば、融資を受けづらくなるのが一般的ですが、信用保証協会の保証をつけることで銀行の融資のハードルが下がります。また、他の融資制度と併用することができるので、借入枠の拡大が図れます。

2.担保がなくても利用できる保証制度がある

信用保証協会の保証枠は原則2億8,000万円ですが、このうちの8,000万円が無担保保証枠になります。つまり、8,000万円の範囲内であれば、担保がなくても融資を受けることができるということです。さらに、第三者の保証人・連帯保証人の必要もありません。

3.一人ひとりに合った保証制度が受けられる

信用保証協会には短期の借入、長期の借入、創業前後、経営危機、災害による経営不振など様々な種類の保証制度があるので、各事業者の実情に応じて保証制度を選択できます。特に、長期の融資を受けられるというのは大きなメリットです。銀行にとって融資の期間が長くなるとそれだけ貸倒れのリスクが高まるので、銀行は長い融資期間を設定したがらない傾向にありますが、信用保証協会の保証があることで、長期の融資を受けやすくなります。

4.低金利で融資を受けられる

信用保証協会の保証をつけることで銀行にとって貸倒れのリスクも減らすことが出来ますので、いわゆるプロパー融資よりも低い金利で融資をすることが出来ます。

信用保証協会を利用するデメリット

信用保証制度を利用することによるデメリットは大きく3つあります。

1.信用保証料がかかる

会社の業績にもよりますが、おおむね融資額の1%が信用保証料として支払うことになります。例えば、5,000万円の融資を5年間で借りた場合の融資保証料は単純計算で125万円となります。中小企業にとって125万円というコストは、決して無視できない数字といえるでしょう。

2.審査に時間がかかる

信用保証協会の保証の仕組みは、事業者と銀行と信用保証協会の3者間で決まるものであり、銀行と信用保証協会の2つの機関が審査するので時間がかかります。特に、はじめての利用の場合は、融資の申込みから融資の実行までに1ヶ月程度かかる場合もあります。また、年末や年度末などの混雑している時期や会社の状況によってはそれ以上掛かることもあります。したがって、融資の申込みをする際には時間的な余裕を持って申込みをすることをおすすめします。

3.書類作成の手間がかかる

銀行への融資の申込みの書類に加えて、信用保証協会への保証申込みの書類などが必要になるので、作成する書類が増えるという側面があり、

信用保証協会の審査の攻略法

信用保証協会の保証付きの融資を受けるためには銀行の審査だけではなく、信用保証協会の審査をパスしなければなりません。信用保証協会の保証審査のポイントを押さえて、信用保証協会付き融資の獲得につなげましょう。

審査の大前提

審査以前の問題ではありますが、信用保証協会の保証付き融資を利用できる中小企業であることが必要です。具体的には次のとおりです。

企業規模

まず確認して頂きたいのが、「企業規模」です。信用保証協会の保証を利用できるためには業種別に以下の要件を満たしていることが必要です。

・製造業、建設業、運輸業…資本金3億円以下、従業員数300人以下
・卸売業…資本金1億円以下、従業員数100人以下
・小売業、飲食業…資本金5,000万円以下、従業員数50人以下
・サービス業…資本金5,000万円以下、従業員数100人以下
・医療法人等…資本金要件なし、従業員数300人以下

上記の資本金要件もしくは従業員数要件のいずれかに該当していれば信用保証協会の保証を受けられます。しかし、どちらもオーバーしていると信用保証協会を利用できません。

業種

信用保証協会はほとんどの業種が利用できますが、信用保証協会が定める「保証対象外業種」に該当すると、信用保証協会を利用することが出来ません。また、保証対象の業種であっても、その業種が許認可の必要な業種の場合は事前に許認可が取得できていることが必要になります。例えば、飲食店であれば飲食店の営業許可が必要になります。また、当然ですが、反社会的勢力に該当する場合には信用保証協会の利用は出来ません。

審査のポイント

以上の前提がクリアできていれば信用保証協会の申込みが可能になります。
ここからは具体的に信用保証協会の審査のポイントについて解説します。

申込金額が保証限度額以内の金額か

信用保証協会の保証制度は保証の内容によって上限額が異なります。例えば、「小口零細企業保証制度」の融資限度額は上限が2,000万円です。したがって、2,000万円を超える融資はこの制度では申し込むことができません。

必ず利用する保証制度の融資限度額を確認して、その範囲内になるように申込みをして下さい。この点については保証申込み前に銀行が確認してくれるとは思いますが、自社でも事前に確認を怠らないようにしましょう。

保証制度の利用要件に該当しているか

保証制度には、それぞれ利用のための要件が設定されています。例えば、「小口零細企業保証制度」では企業の要件が「常時使用する従業員の数が製造業であれば20人以下」という要件があります。したがって、従業員の要件を満たさないと本制度は利用できません。

また、「当座貸越根保証」という制度の利用要件には「同一事業を3年以上継続していること」「2期以上の決算書があること」かつ「申込金融機関と6ヶ月以上の与信取引があること」という要件があります。このように細かい要件が設定されている場合にはすべてを満たす必要があります。

税金の未納はないか

税務署から発行される「納税証明書」を提出して、税金に未納がないことを証明します。万が一、税金に未納がある場合は原則として保証を受けることが出来ません。

既存の保証の返済状況

既に借りている信用保証協会の保証付き融資がある場合は、その融資の返済状況が正常かどうかを確認されます。もし、既存の融資に延滞があると新規の保証は難しくなります。不注意で延滞が発生してしまうケースもありますが、絶対に延滞しないように管理を徹底しましょう。

さらに返済のリスケをしている会社も原則的には融資を受けられません。ただし、コロナ融資ではリスケ中であっても新規の保証を受けて融資を受けたケースはあるようです。また、稀なケースではありますが、設備資金用の借入金を運転資金に転用してなどの「資金使途違反」が発覚しているケースで、その使途違反になっている融資の返済が完了していない場合は、新規の融資の保証は受けられません。

直近の財務状況

直近の2~3期の決算書や試算表などから財務状況を審査します。例えば、直近数年間で債務超過が続いていたり、営業利益が赤字の状態が継続している場合には新規の保証を受けるのは難しくなります。

銀行の審査

こちらは信用保証協会の審査ではありませんが、融資を受けるためには当然銀行の融資審査にも通らないといけません。信用保証協会を利用する場合には銀行が仲介役となる場合がほとんどですので、問題ないとは思いますが、稀に信用保証協会の審査に通って、銀行の審査に通らなかったというケースもあります。

まとめ

これまで、信用保証協会の概要やメリット・デメリットを説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。信用保証協会が、起業家や中小企業の資金調達手段として欠かせない存在であることが確認できたと思います。制度の内容をしっかりと把握し、上手く活用するようにしましょう。

今回はここまで。
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この記事を書いた人

メガバンカー takuo

某メガバンクに勤務していたバンカー。窓口業務・融資・資産承継・事業承継など、あらゆる仕事でハイレベルな実績を残す。起業家や経営者の成功を願い、現役のときには話せなかった独自のノウハウを紹介する。

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