起業家に伝えたい大切なこと

女性起業家が知っておきたい公的支援制度

起業家バンク事務局

2021.09.10

起業というと男性のイメージが強いかも知れませんが、女性の社会進出が進むにつれて、近年は起業する女性の方が多くいらっしゃいます。

日本政策金融公庫の「新規開業実態調査」によれば、女性の起業家の割合は年々増加しており、今では5人に1人が女性起業家となっています。最初は自宅で家事と育児と両立しながら、個人事業主として開業し、その後、株式会社を設立した女性起業家の方が多くいらっしゃいます。

起業する場合、ある程度の自己資金を準備しておかなければなりませんが、近年では新規事業への銀行融資の難易度が上がり、なかなか融資がおりないと言われています。

一方、国や公的機関では女性の起業を支援するために様々な支援制度を用意しています。今回は女性が起業する際にぜひ利用したい融資制度・助成制度についてご紹介します。

女性起業家が知っておきたい融資制度

ここでは日本政策金融公庫が実施している融資制度についてご紹介します。
すでにご存知の方も多いかと思いますが、日本政策金融公庫とは100%政府が出資をする政府系金融機関です。したがって、国民の起業を推進することが目的ですので、民間金融機関と比べて、融資審査のハードルが低く、民間金融機関で断られたのに日本政策金融公庫で申し込んだら、あっさりと通過した、なんて話もよく聞きます。女性活躍という国策を推進し、民間金融機関の補完という役割上、審査は民間銀行と比べたら易しめで、初めて起業する方でもお金を借りやすいというメリットがあります。

今回は女性が活用しやすい融資制度として「女性、若者/シニア起業家支援資金」をピックアップしました。概要やポイントについてご説明します。

女性、若者/シニア起業家支援資金

2021年度の制度の内容になりますが、女性、若者/シニア起業家支援資金の概要やポイントを紹介します。融資制度は年度によって少しずつ変わりますので、詳しく知りたい方は日本政策金融公庫のホームページなどで確認しましょう。

この融資制度は、女性、若者、高齢者のうち新規開業して概ね7年以内の方を優遇金利で支援する融資制度です。支援の対象者は女性、若者(35歳未満)、高齢者(55歳以上)の方です。個人事業主やベンチャー起業を対象とする国民生活事業と中堅中小企業を対象とする中小企業事業の双方で取り扱いがあります。今回は国民生活事業の支援制度をご紹介します。

融資金額は上限7,200万円ですが、運転資金の場合には4,800万円までとなります。利率は基準金利マイナス0.4%となっていて、返済期間は運転資金7年、設備資金20年ですが、希望により短縮することも出来ます。

おすすめのポイント

本制度の魅力はなんと言っても条件を含めた制度のシンプルさです。実質的に、創業者が女性というだけで低い利率で融資が受けられます。さらに保証人も担保もいらない無担保無保証の融資制度となります。本制度は創業前の方でも融資の対象としており、前向きに融資を検討してくれます。事業計画を策定し、公庫に承認されることが前提条件ですが、事前に窓口で融資相談をすれば、何でも相談に載ってくれることでしょう。まさに「実績はないけどこれから起業したい」と思っている女性にピッタリの融資制度です。
 

女性起業家が知っておきたい国の助成金

国の助成金とは、企業や個人事業主などの事業者に支給される支援金のことで、厚生労働省が管轄しています。雇用の増加や人材育成、労働環境の改善を実施した事業者への支援金というのが基本的な考えです。支払いは基本的に後払いとなっていますので、交付決定後にすぐに支給されるわけではありません。したがって、助成金の対象となる事業を実施し、経費を支払ったことを証明した後に審査に通過すれば助成金の交付が決定されます。

両立支援等助成金とは

両立支援等助成金とは、従業員の職業生活と家庭生活の両立支援や女性の活躍推進に取り組む事業主を応援する制度です。様々なコースがあり、男性の育児休業取得促進、仕事と介護・育児の両立、育児、介護等による退職者の再雇用、女性の活躍を促進するというコースがあります。

このうち、女性の活躍を目的としたコースが「女性活躍加速化コース」です。本制度は女性の起業家を支援するというよりは女性従業員の登用などを目的した制度です。しかし、女性が起業する場合は女性の従業員が多い傾向にあるので、女性起業家が知っておきたい制度といえるでしょう。

女性活躍加速化コースとは

女性活躍加速化コースは、人口減少社会において女性の社会進出を促したり、女性の管理職への登用の促進を後押しする女性活躍推進法を背景として創設されました。女性社員の雇用や女性管理職への登用に関する数値目標、その目標に対しての取組を評価する取組目標を達成した事業者に対して支給されます。コースには「加速化Aコース」と「加速化Nコース」があり、それぞれ目標達成の基準が異なります。

数値目標

自社の状況把握や課題分析の結果をもとに、男性と比較して女性の活躍に課題があると判断した場合に、その課題を解決するために「目標」を設定することです。目標を立てる際には取組の前と後で達成状況を比較・確認できる必要があります。そのため、前後で◯%から◯%へ、〇〇人から〇〇人へなど前後比較が出来るようにすることが大事です。

数値目標で設定されている取組には①女性の積極採用に関する目標、②女性の配置・育成・教育訓練に関する目標、③女性の積極登用・評価・昇進に関する目標、④多様なキャリアコースに関する目標の4つがあります。
①に関しては女性の採用倍率を引き下げたり、採用者に占める女性の割合を増やす取組などが挙げられます。②に関しては自社の職種や部署において女性の割合を引き上げること、③に関しては管理職、より具体的には課長や部長に占める女性の割合を引き上げること、④に関しては一般職から総合職へ女性の配置転換を増加させることなどが挙げられます。

取組目標

数値目標を策定したら、それを達成するための取組目標を設定します。数字で示す必要はありませんが、実施状況を客観的に検証できる内容であることが重要です。

支給対象となる取組目標として以下のようなものが挙げられます。
・女性の応募が少ない職種に大学の学部と連携して女性学生用のセミナーを実施する
・女性学生用パンフレットを作成する
・管理職の女性の割合を上げるために人事制度を改定する

加速化Aコース

取組目標を達成した場合に28万5000円が支給されるコースです。ただし、従業員の数が300人以下の事業者に限られ、利用は1回までとなっています。

加速化Nコース

取組目標と数値目標を達成した場合に支給されます。数値目標を達成すると、従業員の数が300人以下の事業者は28万5000円支給されます。さらに女性管理職比率が一定以上上昇すると、従業員300人以下の事業者は47万5000円、従業員300人以上の事業者は28万5000円支給されます。

おすすめのポイント

本制度は女性の起業支援というよりは女性の登用等を目的したものですが、女性が起業する場合は女性の従業員が多くなる傾向にあるため、女性起業家が知っておきたい制度といえるでしょう。女性としての目線を活かして、女性が働きやすく、能力を活かしやすい環境を整えることで資金使途を問わない支援金が支給される魅力的な制度なので、ぜひ検討してください。

女性起業家が知っておきたい東京都の助成事業

女性起業家を支援しているのは、国や公的機関だけではありません。みなさんがお住まいの都道府県や市区町村でも女性起業家を応援する助成制度を設けている場合があります。ぜひ、調べてみてくださいね。

ここでは東京都の「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」について、概要とポイントをご説明致します。

若手・女性リーダー応援プログラム助成事業とは

東京都中小企業振興公社が実施している補助金制度で、女性と若手男性(39歳以下)が都内の商店街で店舗を開設する際に利用できる助成金です。対象となる業種は小売業、不動産業、写真業、宿泊業、飲食業、美容業、学習塾などとなっています。

申請要件

具体的な申請要件は以下の通りです。
・女性または若手男性(39歳以下)
・創業予定の個人または個人事業主(法人は不可)
・都内商店街で店舗開業
・開業時期は交付決定日以降
・公社が定める業種(小売業、不動産業など)
・申請時点で実店舗を出していない

支給額

本助成金の助成対象期間は交付日から2年間、助成金額は最大で730万円で、補助率は3/4以内となっています。
助成対象経費は①事務所整備費、②実務研修受講費、③店舗賃借料となっています。
①事務所整備費とは店舗の新装改装工事費・店舗の設備・備品購入費・宣伝広告費のことで、金額は400万円です。
②実務研修受講費は6万円、③店舗賃借料、つまり開業のために新たに店舗を借りる場合は1年目は月15万円、2年目は月12万円となっています。

申請時期

申請期間は例年は4月からとなっており、2020年3月25日現在、令和3年度予算が令和3年3月31日までに都議会において可決された場合に、令和3年4月1日から実施される予定です。

申請方法

申請方法はweb登録と書類提出の2通りあり、web登録の場合は東京都中小企業振興公社のHPより登録し、書類提出の場合は東京都中小企業振興公社助成課に直接持参して行います。

提出書類

提出書類は以下のとおりです。
・申請書(事業計画を記載します)
・商店街出店に関する承諾書(出店にあたって、商店街組合代表者の承諾が必要です)
・確定申告書
・納税証明
・経営研修に関する証明書(経営知識があることの証明、例:経営セミナーに参加した証明)
・職務経歴書
・工事見積書、備品カタログ、費用価額の根拠
・店舗レイアウト、(任意)事業計画、市場調査結果

申請書には事業計画を記載しますが、具体的には以下のような記載内容です。
・申請者の状況(氏名、連絡先)
・事業内容(商品やサービスの内容)
・申請者について(申請事業の経験)
・事業効果(商店街への貢献、商店街で発揮するリーダーシップ)
・収支計画、資金計画
・(改装する場合の)店舗や工事の概要
・スケジュール

審査のポイント

審査項目は以下の6点です。

①実現性
店舗開業の実現性と店舗が今後も経営を続けられるかどうかの継続性
②妥当性
事業を行ううえでの資金計画及び収支計画が妥当なものか
③事業効果
店舗開業による商店街への貢献度や波及効果
④経営者の適格性
経営者の資質、意欲、経験、知識、人脈
⑤独創性
オリジナリティ、つまりどこにでもあるような店舗でないこと
⑥リーダーシップ
商店街においてどのようなリーダーシップを発揮できるのか

審査方法は資格審査、書類審査、面接審査の3つがあり、資格審査は必要な要件を満たしているかどうか、書類審査は必要な書類が揃っているかが確認されます。

おすすめのポイント

工事費や広告費、家賃が対象となっている非常に魅力的な助成金となっています。女性であれば男性のように年齢制限がありませんので、都内の商店街で開業するならばぜひ検討したい助成金です。
一方で物件の決定や事業計画の作成には相当な時間がかかります。また、商店街組合との面談や見積書、レイアウトの作成など様々な作業が必要になりますので、早めに着手しましょう。
 

まとめ

女性活躍推進はもはや国策であり、国を挙げて女性起業家を支援する制度が拡充しつつありますので、起業を検討されている方はぜひ検討してみてください。今回ご紹介した公的支援制度は女性を対象としたものがメインですが、この他にも起業を支援する公的支援制度はいくつもあります。当然、女性も対象に含まれるので厚生労働省や経済産業省、事業を営む地方公共団体の制度もチェックしてみましょう。

今回はここまで。
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