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法人で取得した株式を売却するときの税金

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法人は企業活動によって利益を上げることが前提ですが、手元に十分な資金があり、当面大規模な投資を予定していない場合には余剰資金で資産運用を行うことも選択肢です。法人の資産運用としては株式、債券、仕組債など様々な選択肢がありますが、最も代表的な投資先は株式です。

中小企業の場合は取引先との関係上株式を保有することもありますが、純投資として法人口座で運用を行う企業もあります。株式で運用を行う場合は株式を売却すると売却益に対して税金が課されます。経営者の方の中には個人口座で株式の運用を行っている方もいるかもしれませんが、実は個人と法人では売却益に課される税金の仕組みが異なります。経営者としては株の売却による税金への影響を理解しておきましょう。この記事では中小企業が株式を売却した際にかかる税金や税法上の仕組みについて解説します。

株式の売却益にかかる税金

法人が取得した株式を売却する場合はその売却益に対して税金が課されます。
法人の所得に課される税金は主に以下の3つです。

・法人税
・法人事業税
・法人地方税

中小企業(資本金1億円以下の法人)で、株式の売却益にかかる税率は25~42%程度となっています。法人の利益に対して課される法人税は一律で23.4%ですが、株式の売却の場合には、株の売却益が生じた事業年度、法人の規模、企業の年間法人所得の金額によって税率が変動するので、このように一定の幅があるのです。また、法人事業税は都道府県によって異なります。

株式の取得原価の算出方法

税金の金額は売却益×税率によって求められるので、税金について計算するためには売却益の金額を確定させることが必要です。売却益を求める計算式は以下のとおりです。

株式の売却益=譲渡金額ー取得原価ー譲渡経費

このように売却益は、株式の売却費用から取得原価と譲渡経費を差し引いて求めます。譲渡金額は売却した際の価格であり、譲渡経費は証券会社に支払う手数料などですので、計算は簡単です。問題は取得原価であり、売却益を正確に計算するためには取得原価を確定させることが必要です。

取得原価とは、売却した株式を購入した際の価格ですが、計算方法には総平均法と移動平均法があります。基本的にどちらの計算方法を適用しても構いませんが、総平均法で計算を行いたい場合は、税務署に総平均で計算することを届出する必要があります。移動平均法は税務署に届出をしなくても適用することができます。

総平均法とは

総平均法とは、事業年度中に購入したすべての株式について、その年の1月1日に所有していたものとその年中に取得したものとの取得価額の総額をこれら株式等の総数で除して求める方法をいいます。この方法で譲渡原価を計算する場合は、事業年度中の譲渡単価はすべて同じ単価で計算することになります。

移動平均法

移動平均法とは、有価証券を取得するつど平均単価を求めて、払出単価に利用する方法です。そのため、移動平均法では譲渡原価を求める際に用いる 1 単位当たりの帳簿価額は譲渡時点で決定します。移動平均法は手間がかかるというデメリットがありますが、単一の事業年度だけに焦点をあてると総平均法よりも課税所得に差が生じる場合があります。税負担を考慮して有利な方を選択することも重要です。

会計上の株式の取り扱い

有価証券はその保有目的ごとに、①売買目的有価証券、②子会社株式および関連会社株式、③満期保有目的の債券、④その他有価証券、の 4つのうちいずれかに分類する必要があり、それぞれ評価方法や会計処理が異なります。これらの会計上の違いは、株式のみならず、債券など他の有価証券でも同様の取り扱いとなります。

売買目的有価証券

売買目的有価証券とは短期的な時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券のことをいいます。 「時価の変動により利益を得ることを目的として保有する」とは短期間の価格変動により利益を得ることを目的として保有することをいい、通常は同一銘柄に対して相当程度の反復的な購入と売却が行われるものをいいます。

短期間が具体的にどの程度の期間かは明確にされていませんが、市場の動向を見ながらいつでも売買を繰り返し行える状況にあるものが売買目的有価証券に該当すると考えられます。勘定科目は「(売買目的)有価証券」勘定を使用し、決算時に所有しているものは時価で評価します。

満期保有目的有価証券

満期保有目的有価証券とは、主に利息の受け取りを目的として満期まで所有する意図をもって保有する有価証券です。勘定科目は満期日によって異なり、通常は「投資有価証券」勘定を使用しますが、満期日が決算日の翌日から1年以内に到来する場合は「有価証券」勘定を使用します。

満期保有目的有価証券は満期まで保有して利息を受け取り、償還を受ける目的なので短期的な時価の変動により利益を得ることを目的としていません。したがって、決算時に所有しているものは時価で評価せず、原則、帳簿価額のままです。

子会社・関連会社株式

子会社・関連会社株式とは子会社や関連会社の所有を目的とした株式です。これら子会社・関連会社株式は決算時に所有しているものは時価で評価せず、帳簿価額のままです。子会社・関連会社株式は子会社や関連会社の将来の成果を期待して保有するものであるため、長期的な事業投資に当たります。

したがって、事業投資の成果により得られる長期的な利益が重要であり、売買目的有価証券のように短期的な時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券ではありません。したがって、期末時点での株式の時価はあまり重要ではないのです。

その他有価証券

その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券をいいます。決算期に保有している有価証券は時価で評価し、その評価損益を、税効果分を除いて貸借対照表に計上します。つまり、帳簿価額のままです。ただし、市場価格のある有価証券を取得原価で貸借対照表に計上する場合であっても、時価が著しく下落したときは、将来回復の見込みがある場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は特別損失に計上します。

税務上の株式の取り扱い

法人が株式を購入または売却する場合には、株式を保有する目的によって税務上の取り扱いが異なります。税務上の取り扱いは、法人税の計算を行うための処理方法のことであり、税務上の取り扱いが異なると売却時の税負担が異なることになります。会計上4つの種類に分かれますが、税務上は大きく分けて、売買目的有価証券と売買目的外有価証券の2つの種類に分かれます。これらの税務上の違いは株式のみならず、債券など他の有価証券でも同様の取り扱いとなります。

売買目的有価証券

売買目的有価証券は、主に短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で所有する有価証券です。売買目的有価証券は「専担者売買有価証券」とそれ以外の有価証券に分類されます。

専担者売買有価証券にはほとんどすべての売買目的有価証券が該当します。これらの有価証券は時価法が適用され、時価と帳簿価額との差額が評価益又は評価損として税務上の益金又は損金の額に算入されます。一方で専担者売買有価証券以外の有価証券は、短期売買目的で取得した旨を帳簿書類へ記載します。評価方法は時価となります。

売買目的外有価証券

売買目的外有価証券は売買目的有価証券以外に区分される有価証券ですが、これらの有価証券は原価法が適用され、帳簿価額をもって期末評価額とします。ただし、償還期限及び償還金額が定まっているものについては償却原価法が適用され、その調整差額を帳簿価額に加算又は減算した価額をもって期末評価額とします。また、「その他有価証券」のなかで会計上、時価で評価している場合の評価損益は、税務上では否認されるので注意が必要です。

株式売却時の税金の取り扱いを理解しよう

この記事では、法人が株式を売却した場合の税金の金額や仕組みについて解説しました。法人が株式を売却する場合には株式の分類や譲渡原価が売却益や税額に影響を与えるため、正しく理解しておく必要があります。正しい税務上の処理を行わなければ、法人税を過少申告しているとみなされる場合があるので注意が必要です。

今回はここまで。
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