起業家に伝えたい大切なこと

日本で起業する外国人留学生が直面する5つの課題

起業家バンク事務局

2019.01.20


 

2019年1月、日本で起業する外国人を増やそうと、起業を目指す外国人留学生の滞在要件を緩和することが政府内で検討されています。外国人労働者の受け入れを拡大する「出入国管理法改正案」が閣議決定されましたが、日本では人口減少と高齢化が急速に進んでおり、将来、日本経済が縮小することが見込まれることから、このような取り組みに乗り出しているものと考えられます。

どのような制度なのか?

今まで外国人留学生の起業要件は非常に厳しく、ほとんどの外国人留学生は日本で起業する意欲があっても帰国せざるを得ませんでした。しかし今回、起業希望者を対象に、最長1年の滞在延長が認められることで検討が進められています。

外国人留学生が直面する5つの課題

外国人留学生が日本で起業するにあたって、主に次の5つが課題となります。この課題を踏まえて起業の準備を進めるようにしましょう。

1.事業計画書の作成

日本で起業を希望する外国人留学生は、管轄の地方自治体に活動計画書を提出するとともに、法務省に「特定活動の在留資格」を申請することになります。国の政策でもありますし、地方自治体が認定したものを法務省が拒否することは考えづらいので、外国人留学生の当面の課題は「活動計画書」の作成になりそうです。

起業には、アイデアやマーケティングといった「攻めの分野」だけではなく、法務や労務といった「守りの分野」を固める必要があります。

活動計画書がどの精度まで求められるか未定ですが、通常の創業計画書レベルであれば、起業するときの手続きをどうするのか、許認可等の届出が必要な業種なのか、社会保険や労働保険などの加入をどうするのか、など、起業に関する日本の法律を知らなければ、具体的な計画書を作成することは難しいといえます。自治体や起業支援機関の細かなサポートが期待されるところです。

 

2.事業資金の調達

資金は事業の血液であり、資金の流れが滞ると事業は立ち行かなくなります。では、起業意欲のある外国人留学生は、どのように起業資金を調達すればいいのでしょうか。

日本人の学生であっても、学校を卒業してすぐに、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けることは難しいことです。銀行の融資はリスクマネーではないので返済可能性で審査されますが、自己資金や社会経験の少ない起業家はリスクが高いと判断され、融資がされにくい傾向にあります。それに加えて、外国人留学生の場合は、融資審査の過程において「返済されないまま帰国されたとき」のリスクを必ず考えるはずなので、外国人留学生に融資をする金融機関はほとんどないと思われます。

そうなると資金調達先として考えられるのは、自治体の制度融資、または政府系金融機関からの融資となりますが、仮に、政策的な観点から融資を受けることができたとしても「少額融資」に留まるでしょう。これでは起業する外国人留学生の方も経営が安定しなくなり、リスクが大きくなります。

「投資家から資金を集めればいい」と考える人もいるでしょうが、起業前に投資家やベンチャーキャピタルから資金調達できる人は、全体の起業数から見ても限りなくゼロに近く、飛び抜けた技術や能力をもった起業家に限られます。そのような外国人留学生は大企業に就職するか、起業の道を選んだとしても、起業場所に日本を選ぶかどうか疑問です。

要するに、「ベンチャー型の起業家」は資金は集まるものの、ごく少数に限られ、「スモールビジネス型の起業家」は資金そのものが調達できない又は少額しか調達できない、ことになります。いずれにせよ、資金調達のハードルは高いと言えるでしょう。

 

3.店舗や事務所が借りられない

起業するには、店舗や事務所といった開業場所が必要です。外国人留学生が開業場所を所有しているケースはないでしょうから、現実的には開業場所を借りることになります。場所を借りるには、もちろん貸主と賃貸借契約を結ばなければなりません。しかし、ここで大きな課題が生じるでしょう。
具体的には、貸主が外国人留学生の起業家を嫌って賃貸借契約が結べない状況、つまり「開業場所が確保できない」状況になることです。

通常、賃貸借契約には、万が一のときの緊急連絡先、家賃が滞納したときの連帯保証人といったものが求められます。このとき、留学生の出身国の家族を緊急連絡先や連帯保証人に提供しても、貸主にとって現実的な話ではありません。

じゃあ「外国人留学生が住んでいる自宅を事務所にすればいい」と考える人もいると思いますが、こちらも簡単な話ではありません。
なぜなら賃貸借契約には、通常、使用目的という項目が定められており、自宅は「居住用」にしか使えない決まりになっているからです。自宅を「事業用」として使うのであれば、やはり貸主の承諾をとっておく必要があるでしょう。

外国人留学生の開業場所を確保するために、自治体が所有するスペースを提供したり、空き家となっている物件を斡旋したりするなど政策的なサポートが必要になりそうです。

4.滞在期間が短い

起業当初から軌道にのるまでの流れを表す言葉として、よく「魔の川」「死の谷」「ダーウィンの海」という表現が使われます。もともとは研究開発や技術革新に関連して生まれた言葉ですが、この表現は全ての起業家に当てはまります。

起業当初は認知度が低く体制も整ってきないことなどから売上<経費となり、起業当初に準備した資金は徐々に減っていきます。事業活動が実を結びはじめると、次第に売上=経費となり、その後、売上>経費となっていきます。つまり、事業が軌道にのるまでには一定の時間がどうしても必要になります。

延長できる滞在期間は原則1年ですから、(在留資格の変更が可能だとしても)1年以内で魔の川・死の谷・ダーウィンの海を脱出するのは非常にハードルが高いといえます。期限を短期に切られるのであれば、将来が期待できる事業であっても陽の目を見る前に雲散霧消してしまうかもしれません。今後、詳細な規定が決まっていくと思いますが、滞在期間に関する取り決めについては注視する必要がありそうです

5.言葉の壁

日本に留学していると言っても、流ちょうに日本語が話せるわけではありません。商売をするには、取引先との交渉、法的な契約、スタッフへの指示など日本語でのコミュニケーションは欠かせません。日本語はグレーな言い回しが多い言語ですので、外国人留学生にとって言葉の壁はディスアドバンテージとなるでしょう。日本語の学習はもちろんのこと、決定事項を随時文書にするなど、お互いの認識を相互に確認できる工夫が必要になりそうです。

まとめ

ともすれば日本人の学生よりも外国人留学生の方がハングリー精神があり起業家に向いているかもしれませんが、解決すべき課題は少なくありません。日本経済を支えるため、また出身国との橋渡し役となるため、政策的に充実したサポートが期待されます。

今回はここまで。
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