事業融資が断わられる、減額される35の理由

銀行、信用金庫、日本政策金融公庫などの金融機関は、起業家や中小企業向けに融資を行っています。しかし、融資を申し込みしても、ケースによっては融資を断られたり、希望金額から減額させられたりします。この記事では融資を申し込みした際、これらの金融機関から融資を断られる、または減額される35の理由を解説しています。

Ⅰ.事業に原因がある

1.事業が不採算である

そもそも事業の収支が赤字であれば返済に充てる財源が不足することになるため、融資が断られる、減額される確率が高まるでしょう。実際、不採算は融資が断られる、減額となる理由として、最も多い理由のーつです。

ただし、少し難しい話になりますが、たとえば減価償却費といった非資金項目(実際にキャッシュアウトしない支出項目)によって赤字となっている場合は、返済財源が不足するわけではないので、さほど大きな問題になることはありません。
金融機関は返済してもらえるか否かを審査するわけですから、会計上の損益よりも、キャッシュフローで黒字を確保しているかどうかが重視されます。

2.未申告である

申告義務があるにも関わらず、確定申告を行っていない場合、融資を受けることは難しいでしょう。未申告であると収支が黒字なのか赤字なのかはっきり分かりません。金融機関はしっかり返済してもらえるか否かを審査しているわけですから、黒字か赤字か分からない状況だと審査の土俵にも上りません。

また、未申告は脱税の可能性が生じるため、コンプライアンスを重視する金融機関が未申告事業に融資をすることはないでしょう。貸し手責任を問われて社会的な批判を浴びたくないからです。

3.役員報酬がゼロである

黒字に見せるために役員報酬をゼロにしたとしても、それは健全な黒字とはいえません。役員とはいえ生活していかないといけないわけですから、最低限の役員報酬は必要経費として支出して然るべきです。

役員報酬を支出しない状態が永遠に続けられるわけではないですし、見た目だけの黒字で審査担当者の目をごまかすことはできません。むしろ、役員報酬をしっかり計上して赤字になっている方が審査担当者の心証はいいでしょう。

4.資産が少なく負債が多い

これまでは主に収支に関する話でしたが、今回は資産と負債のバランスの話となります。金融機関が重視している経営指標のーつに「自己資本比率」という指標があります。
自己資本比率とは、総資本(資産+負債)のうちどの程度が自己資本(資産)で占められているかを表すもので、一般的に20%以上あれば安全、10%~20%であれば警戒、10%以下であれば危険水域と言われています。

資産が少なく負債が多いと、自己資本比率が低下するため、融資先として敬遠される傾向にあります。資産負債のバランスを整えて経営することが非常に重要です。

5.自己資金・資本金が少ない

手持ち資金が少ないから融資を受けるんだ!と考えるでしょうが、突き詰めれば、先ほどの「自己資本比率」の問題と同じです。
たとえば、自己資金が50万円で500万円の融資を受ける場合、総資本が550万円(資産+負債)、自己資本が50万円(資産)となり、自己資本比率は約9%となります。つまり、金勇機関側の立場から言えば、融資した瞬間に自己資本比率が10%以下となり、危険水域にある会社に融資するのと同じになるわけです。
少しでも手持ち資金を積み上げるか、借入金を減らすか、基本的には2つに1つと考えましょう。

6.必要な許認可がない

事業によっては、事業を行う前に許可や認可などを取得しなければなりません。必要な許認可を取得していなければ、コンプライアンスに厳しい金融機関が融資をすることはありません。登録や届出などは忘れがちなので特に注意が必要です。また、許認可には有効期間が定められていますので、更新時期にも留意しましょう。

7.事業の目的に登記されていない

株式会社や合同会社であれば、会社を設立するとき事業の目的をあらかじめ登記します。たとえば、飲食店を経営する場合は、事業の目的に「飲食店の経営」と登記することになります。実際に行っている商売が、事業の目的に登記されていなければ、融資対象として不適格と判断され、融資は受けられないでしょう。

8.フランチャイズ事業である

母体となるフランチャイズ本部の業績が良くない場合や事業主のスキルとフランチャイズビジネスとの関連性があまりに薄い場合は融資を断られる、または減額される対象になります。

金融機関は幅広い情報を持っているため、フランチャイズ本部の真の業績を把握しています。フランチャイズ本部の損益シミュレーションをそのまま鵜呑みにするのではなく、自分なりにしっかりとした事業計画を考えて、金融機関を納得させなければ十分な融資は受けられないでしょう。

9.消費者金融から借入している

通常、消費者金融の利率は、銀行が行っている一般的な融資の5倍以上の利率が適用されています。資金調達に係るコストを専門的に「資本コスト」と呼びますが、高い資本コストを払っている事業者は金融機関に敬遠されます。理由はともかく消費者金融はあくまで消費者が使用するもので、事業者が事業資金として利用するものではないことを知っておきましょう。

10.過去に破産・民事再生をしている

破産や民事再生といった事実に対して非常に厳しいのが今の日本の金融機関の現状です。会社または経営者個人が過去に破産・民事再生を行ったことがある場合は、民間金融機関の融資を受けることは難しいでしょう。この場合、破産や民事再生を行っていたとしても申し込みができる公的融資(日本政策金融公庫の再チャレンジ資金など)を検討した方がいいでしょう。

 

 

Ⅱ.経営者に原因がある

11.返済が遅延している

事業が不採算のために返済ができない場合は当然に融資の対象になりませんが、そうでなくとも残高不足など些細な理由で返済が遅延してしまっても「お金にだらしない経営者」というレッテルを貼られ、融資が断られる可能性があります。

商品の仕入代金の支払いが遅れると商品を卸してもらえなくなります。また、店舗の家賃が遅れたりすると、賃貸借契約を更新してもらえないことがあります。金融機関も同じで、約定の期日に返済をしないと、次の取引(融資)に支障が出るのは当然のことです。

12.カードで複数キャッシングしている

金融機関は信用情報を取得しますので、誰がどれほどの負債を抱えているか把握することができます。そのときクレジットカードから複数キャッシングしていると、高い資本コストを払っているとみなされ、融資が断られることがあります。カード社会となっていますが、できる限りカードの枚数を減らし、必要以上にカードを所持しない方がいいかもしれませんね。

13.虚偽の申し出をする

融資審査では、事業内容、経歴、借入状況など、さまざまなことについて確認されます。何か後ろめたいことがあっても、正直に話すようにしましょう。知られたくないことを隠し通せる自信があるなら別ですが、リスクは大きいです。

詳細は説明しませんが、どうしても話したくない内容があるなら、以前に話題となった「ごはん論法」などの交渉術が有効かもしれませんね。

14.転職回数が多い

忍耐力は間違いなく経営者に必要な資質の1つです。転職回数が多いと、審査担当者が「この人は忍耐力に欠けるのではないか」という心証をもち融資を断わる、または減額することがあります。
転職回数と忍耐力を結び付けて考えるなんておかしい!と思う人もいるでしょう。まったくその通りなのですが、理屈ではなく心証の問題なので仕方ありません。1年以内でやめた職場は黙っておいた方がいいかもしれませんね。

15.会社役員が短期間で変わっている

会社役員が短期間のうちに変更されていると、会社の事業基盤が脆弱であると判断され、融資を断られることがあります。一般的に考えても、短期間で会社役員が変わっている会社は信頼されないでしょう。とくに法人謄本に登記する役員については慎重な人選が必要です。

16.本店住所が短期間で変わっている

住所が短期間のうちに変更されていると会社の事業基盤が脆弱であると判断され、十分な融資を受けられないかもしれません。会社であれば、本店住所をあらかじめ登記しますが、住所を変更した履歴はずっと残るので、住所が変わったかどうかはすぐに判明します。頻繁に本店住所を変えないように注意しましょう。

17.過去に金融機関とトラブルがある

金融機関の担当者とは決して喧嘩をしてはいけません。銀行のような大きな組織には少なからず変わった人もいるので、たとえそのような人が自分の担当になったとしてもトラブルになるほどクレームを言ってはいけません。大人の対応を心がけましょう。金融機関は転勤サイクルが早いですから、2~ 3年もすれば異動になり、顔を合わせずに済みます。そこまで我慢です。

18.傀儡社長である

傀儡(かいらい)とは、自分の意志ではなく、他人の言いなりに動いているあやつり人形のことです。つまり傀儡社長とは、肩書きだけのお飾り社長のことで、事業について自分の言葉で語ることができない社長のことを指します。
細かな会計のことなどは知らなくても良いですが、事業の全体像や将来ビジョンについて語ることができないと、融資を受けることはできないでしょう。

 

Ⅲ.事業計画に原因がある

19.事業計画書の完成度が低い

新規事業の立ち上げを目的として融資を受ける場合、決算資料とともに事業計画書の提出を求められます。その事業計画書の完成度が低いと、本来リスクとは言えない事柄についてもリスクであると評価され、融資が断られる、または減額される対象となります。事業計画書は相手の知りたい内容を、的確に、かつ論理的に記載しなければなりません。審査担当者に「この事柄はリスクではないな」と納得させる事業計画書を作成しましょう。

20.事業内容が斬新すぎる

銀行などの金融機関はベンチャーキャピタルとは違いリスクマネーを融資することはありません。銀行の利益はインカムゲインとよばれる利息収入であり、毎月、元金と利息をしっかり返済してくれる事業者に融資を行います。つまり、石橋を叩いて渡る堅実さが銀行に評価されます。斬新な新規事業で当たれば一獲千金という事業は決して好まれないことを知っておきましょう。

21.事業計画がコロコロ変わる

事業計画の内容がコロコロ変わると審査担当者も何を信じて審査していいか分からなくなります。軽微な変更ならまだしも根底から計画が変わるのならば、信用できない事業計画と評価されても仕方ありません。

たとえ審査担当者から事業計画書の記載内容について指摘されたとしても、「じゃあ、そのように変更します」と簡単に応じるのではなく、しっかりと審査担当者に自分の意見を述べましょう。その過程を経たうえで事業計画を見直すのであれば大きな問題は起こらないでしょう。

22.過大投資すぎる

事業規模に比べて設備や新規事業への投資額が大きすぎると判断された場合、融資を断られることがあります。過大投資は、車の運転から飛行機の操縦にグレードアップするようなもので、飛行機を動かせるだけの組織力(操縦士、CA、整備士等)や資金調達力が見込めないと融資は実行されません。
過大投資と言われても、なお、事業を前進させたいと考えている場合は、丁寧な事業計画書を作成し、採算に合う事業であることを示すことが大切です。

23.融資の使いみちが不適切

決算状況に問題がない場合でも、融資の使いみちが不適切であると融資が断られます。たとえば、非合法なドラッグを海外から仕入れる目的というのは、使いみちに問題があると分かりますよね。
そうでなくても、購入したばかりの車の買い替える費用、金融業に関する費用(金融機関は金融業に関する費用を融資しません)、子供の学費に充てる費用なども、使いみちが不適切であるとして、融資対象になりません。

 

Ⅳ.金融機関側の事情

24.与信額をオーバーしている

与信とは「信用を与えること」です。つまり、与信額とはいわば金融機関が事業者ごとに定めている融資限度額です。金融機関はそれぞれの基準に従って、この事業者はこのぐらいの金額まで融資がOKという融資枠を定めています。
厳密には細かい規定がありますが、たとえば、ある事業者の与信額が3千万円で、その事業者から3千5百万円の融資の申し込みがあった場合は5百万円の減額となる、といった考え方です。与信額は銀行ごとに定められているものなので、与信額がオーバーするのであれば、他の金融機関に相談し、新たな与信枠を獲得しましよう。

25.担保割れ

経営者保証に関するガイドラインが運営されたことで、保証のいらないプロパー融資が年々増加していますが、融資の希望額が高額のときは、やはり不動産などの担保が必要になってきます。金融機関が行う担保評価額は、たとえば不動産であれば時価の70%というように、一定の減額査定がなされます。
このとき何らかの理由で減額査定が大きくなると、融資を受けるために必要な担保評価額に届かず、担保割れが生じてしまいます。担保割れが起きると、融資が断られる、または減額される対象になります。

26.他の金融機関の融資が断られている

メイン銀行とサブ銀行の両方から融資を受けている場合、メイン銀行から融資を断られると、サブ銀行の融資がストップすることがあります。事業をメインに支えている銀行の融資が止まると、サブ銀行では事業の資金需要に応えられなくなるためです。

サブ銀行から融資を断られた場合はどうなるでしょうか。この場合、メイン銀行のスタンスによっては融資がストップする可能性があります。メイン銀行をどこにするか、評判などを慎重に分析しながら検討しないといけないですね。

27.前回の融資から日が浅い

2回目以降の融資で前回融資を受けたときから日が浅いと融資を断られることがあります。1カ月前に融資を受けて、さらに今月も融資を受けたいと考えてもダメということです。

では、どのぐらいの期間を空ければよいかということになりますが、実は特に決められた期間というものはありません。たとえば、前回の融資の返済回数が10回であれば、半年ぐらい経過すれば追加融資が検討できると思いますが、返済回数が100回払いであれば半年経過してもほとんど返済が進んでいないので追加融資のハードルは高くなります。
そうはいっても、前回の融資直後に大手会社と取引が始まったなどの特殊事情があれば、それはそれで考慮されるので金融機関の担当者にその都度相談した方がいいでしょう。

28.融資を断られてから日が浅い

融資を申し込みして断られた場合、その直後に融資の申し込みをしたとしても上手くいきません。融資が断られた原因を突き止め、その原因を改善しない限り、融資を受けることはできないでしょう。すぐに融資を必要とする場合は、堅実な事業計画書を作成して提出するなどの工夫が必要です。

29.決算が2期終わっていない

融資審査の1つの方法に経年比較というものがあります。要するに事業者の過去の実績と現在の実績を比較して良くなっているか悪くなっているかを分析するものです。決算が1期だけだと、数字が良くなっているか悪くなっているか傾向がつかめません。そのため金融機関は、決算が2~3期終わっていないと静観する方針を出して融資を見送る傾向にあります。

30.リスケをしている

リスケとは「返済スケジュールを変更すること」、つまり、事業が上手くいかず融資の返済額を減額することです。
リスケをしているということは、融資を受ける際に金融機関と約束した返済額が支払えなかったことを意味するので、当然ながら追加融資を受けることはできません。まずは当初に約束した通りの返済額に戻して正常返済ができることを示しましょう。

 

Ⅴ.周りに原因がある

31.保有する株式が少ない

株式会社を設立した出資者が別にいて、自分は会社オーナーから雇われているケースです。大企業であれば保有株式が少なくても大きな問題は起こりませんが、中小企業の場合は経営者のリーダーシップが直接会社の命運を左右することが多いので、代表取締役が会社を実質的に動かせる人間かどうかは、融資審査の非常に重要なポイントとなります。実質的な経営権がオーナー側にあると判断された場合は、経営の決定権がないとみなされ、融資を受けることはできないでしょう。

32.主な取引先が一社のみである

とくに建設業、製造業、運送業に多いですが、親会社の一社専属で仕事をしている場合、リスクが高い事業者として融資を断られる、または減額されるケースがあります。親会社が大企業であるなど事業基盤が盤石であれば良いですが、親会社の事業基盤が脆弱であった場合は、下請け会社の未来は非常に不透明になります。自社ホームページなどを制作して直接営業の間口を広げるなど、親会社に依存しない販売ルートの開拓が必要となります。

33.家族が銀行と取引をしている

融資を申し込みしている金融機関と自分の親族(配偶者など)が取引関係にある場合、ケースによっては自分の融資に影響を及ぼすことがあります。
たとえば、配偶者が金融機関から融資を受けている場合、夫婦が全く違う事業を営んでいたとしても、最終的な財布は1つとみなされ、融資を断られる、または減額されるケースがあります。
金融機関には守秘義務があり「あなたの親族が原因で融資ができない」とは絶対に言いません。そのため、申込人の方としては融資を断られる理由が分からず、フラストレーションだけが溜まるといった悪循環に陥りやすくなります。

34.賃貸物件が事業の用途で使えない

事務所や店舗を構えるとき、ほとんどの方は賃貸物件を借りると思います。実はこの賃貸物件が原因で融資を断られることがあります。たとえば、物件を借りるとき、家主と賃貸借契約を結びますよね。この賃貸借契約には通常、使用目的に関する条項が定められています。その使用目的が「居住用」であったりすると、事業の目的で使うことはできません。事業の用途に使えない物件で営む事業者に融資をすることはできないため、このようなケースは融資が断られることがあります。特に自宅を事務所として使う場合は注意が必要です。

35.賃貸物件が又借りである

賃貸借契約には通常、又貸し禁止(転貸禁止)の条項が定められており、家主が又貸しの事実を知ったときは、無条件で賃貸借契約を解除することができると定められています。又貸しだと、立ち退きを求められるリスクが生じるため融資を断られることが多いです。親族や友人の厚意で事務所や店舗の一角を借りるときは、又貸し禁止の条項に抵触していないか確認しましよう。

 

まとめ

長文をお読み頂きありがとうございました。昨今、全体の事業者数が減少していることから、金融機関は融資先を探している状況であり、金融機関の貸出姿勢は緩やかになっています。それでも融資を断られる、減額されるということは何らかの原因があるはずです。この記事が、その原因を突き止めるきっかけとなり、また事業改善に向かうためのきっかけとなれば幸いです。

 


記事の監修者

maezono

前薗 浩也

中小企業診断士、1級ファイナンシャルプランナー技能士、MBA。

日本政策金融公庫で起業家・中小企業向けの融資審査に16年間従事。審査担当者として融資審査をした実績は7,000社を大きく超える。退職後、独自に積み上げた知見に基づき自ら起業。
現在は全国の起業家・中小企業を対象に「新規事業の立ち上げのアウトソーシング」を手がける起業家バンクを運営する。

 

 

これからも起業や経営に役立つ情報を受け取りたい方、個別相談をしたい方、無料セミナーに参加したい方はメールアドレスをご登録ください。相談会などを開催するときのために活動拠点となる都道府県も一緒にご登録ください。

主に以下の内容について、年に5回程度、情報を発信しています。

・起業や経営のお役立ち情報
・補助金や助成金の最新情報
・個別相談会、無料セミナーの案内

 

 

 

 

 


起業家バンクのwebサイトへ


ブログ内の記事に関するご意見や不適切な表記については、info@kigyouka-bank.com にご連絡ください。当社にてご申告内容を確認したうえ、調査させていただきます。